就職活動(就活)の「解禁」が、今の大学3年生から「12月」ではなく「3月」に繰り下げられ、
企業も学生も手探りの活動が続いている。文部科学省などの企業への調査では9割以上がこの変更に従う意向を示した。
しかし、「できるだけ早く学生に接触したい」と3年生の秋や冬にインターンシップ(就業体験)を実施する企業も多く、
「新・就活元年」を巡る状況は混沌(こんとん)としている。
「インターンシップを実施しなかった企業が『今年は開くので学生に周知を』と言ってくる」と、
東京都内の私立大の就活担当者は言う。
「繰り下げ」の影響で、企業側は学生との早めの接触を望んでいるとみられる。
就職情報サイト「マイナビ」の三上隆次編集長によると、秋や冬に3年生向けの就業体験を開く企業が増え、
人気企業には学生が殺到するため書類選考や面接で「選抜」するという。別の就職支援会社の担当者も
「事実上の1次選考になっているケースもある」と明かす。
10月中旬、都内で開かれた「マイナビ」主催の「インターンシップフェア」には、1日で35社がブースを設け、
約1300人の学生が集まった。参加企業は自社の仕事を説明し「ぜひ体験に応募を」とPR。
千葉県に住む私立大3年の女子学生(21)は「大学の説明会で『就業体験はぜひ参加するように』と言われた。
4年生の体験が参考にならないから不安だ」と話す。
「繰り下げ」の狙いは学業優先や留学推奨だが、学生の受け止め方は微妙だ。
中部地方の国立大3年の男子学生は「秋、冬の平日に体験を実施する企業もある。
留学などで新しい就活の流れに乗り遅れたくない」と焦りをみせる。
法政大キャリアセンターでは、秋以降の就活講座の参加数が前年より少ない。
担当の大山賢一課長は「学生が学業を優先しているのか、『選考開始』が8月に繰り下げられたから
『まだ大丈夫』と考えているのか分からない」としている。
夏から開始されるインターンシップで、就活がより長期化するという見方もある。
文科省などが全国の国公私立大学、短大、高等専門学校計1198校を対象にした調査(回答率85%)では、
約6割が繰り下げに伴ってインターンシップの強化・充実を実施または予定していたが、
早稲田大の佐々木裕康キャリアセンター長は「企業も大学も目先のことだけ考えて動けば『繰り下げ』にした
理念が崩れてしまう」と懸念する。
(12月2日 毎日新聞より)