小学生の子供を持つ働く親にとって、子供たちが放課後過ごせる場である「学童保育」の充実が不可欠だ。
厚生労働省と文部科学省は共同で「放課後子ども総合プラン」を打ち出し、待機児童の解消と、
子供たちが安心して過ごせる安全な居場所づくりを目指す。受け皿として期待されるのは、学校施設を活用した“民”の力。
NPO(民間非営利団体)などが待機児童解消や内容の充実に向け模索を続けている。
◆仕事を諦める
子育て中の女性が社会に出る際の障壁の一つとされるのが「小1の壁」だ。
小学校入学後に子供が放課後を過ごす「放課後児童クラブ」(学童保育)が、
定員不足のため、待機児童となるケースは少なくない。結果として親が仕事を諦める
現象が、こう呼ばれているのだ。
また、「小4の壁」という言葉もある。学童保育の対象は小学1〜3年まで。
このため、小学4年以降の放課後の過ごし方が大きな課題になっている。
子供を留守番させることに不安を感じる親は多く、フルタイムでの勤務を諦めがちだ。
現状、待機児童と小学4年以降の児童の放課後の受け皿の一つとなっているのは、
塾のほか株式会社などが運営する「民間学童」。
しかし、民間学童の開設場所は、マンションの1フロアなどが多く、利用料も、
公設が月額数千円程度なのに対し、民間は同5万〜8万円と高額だ。
このため厚労省は、来年度から学童保育での受け入れを小学6年までに引き上げる方針だ。
さらに厚労省と文科省は「放課後子ども総合プラン」を打ち出し、受け皿の拡大を図る方針だ。
◆学校施設活用を
受け皿として期待されるのは子供たちの普段の学びの場である学校施設だ。
総合プランでは、学童保育と、保育の必要のない児童も放課後を安心して過ごせる
「放課後子供教室」との一体利用を推進するとしている。
「待機児童を解消し、目標を達成するには学校施設の活用が必須」と指摘するのは
小学校の放課後に関連する問題に
取り組んでいる「放課後NPOアフタースクール」(東京都港区)の平岩国泰代表理事だ。
同NPOは平成17年から活動を始め、21年にNPO法人となった。
現在、一体型の施設を「アフタースクール」として、都内など5校で開校。
来春からはさらに3校が開校する予定だ。
「アフタースクール」は、「民間学童」とは異なり、私立の新渡戸文化学園(中野区)といった学校施設内で活動を展開。
さらに子供たちが望む内容と、それを教える地域住民を結びつけるなどして、
音楽や料理、語学、ダンス、武道、理科実験、さらに将棋やけん玉、大道芸といった
幅広いプログラムを提供し、質の高さを確保している。
平岩代表理事は「小学1〜3年と4〜6年の放課後の過ごし方は全く異なる。
高学年の子供の希望をかなえるには、多彩なプログラムが必要だ。学校施設を使い、
地域住民の力も借りて有意義な放課後を全国で提供したい」と話している。
■放課後子ども総合プラン
厚生労働省と文部科学省の「放課後子ども総合プラン」では厚労省が所管する放課後
児童クラブについて、平成31年度末までに、約30万人分の受け皿の整備を目指す。
また全国約2万カ所の小学校区で、放課後児童クラブと、文科省管轄の放課後子供教室を連携または一体化させて実施し、
うち半数の1万カ所以上を一体型とすることを目標としている。
達成に向けては、使っていない教室など学校施設の活用も打ち出した。
放課後児童クラブと放課後子供教室では従来、同じ校内で実施されていても、
管轄が異なるなどの理由で、
一方のプログラムに他方の児童が参加できないなどの問題もあった。
同プランでは「全ての児童が一緒に学習や体験活動を行うことができる
共通のプログラムの充実」を図るとしている。
(12月7日 産経新聞より)