デフレ脱却のカギとなる賃上げの波が一段と広がってきた。
春闘を主導する大手の自動車、電機メーカーで過去最高の
ベースアップ(ベア)が実現する見通しとなっただけでなく、
航空や小売り、外食など幅広い業界で久々のベアに踏み切る
企業が相次いでいる。待遇改善に向けた取り組みも進んでおり、
経済の好環境に弾みがつくことへの期待が高まりそうだ。
2015年春闘で、日立製作所や東芝など電機大手6社は13日、
基本給を底上げするベースアップ(ベア)月3000円とすることで
事実上決着した。
ベアは2年連続で、現在の要求方式となった1998年以降、
14年春闘の2000円を超えて最高額となる。
一段と弾みがつきそうだ。
約160社の労働組合が加盟する電気連合は、
日立、東芝、パナソニック、三菱電機、富士通、NECの6社が同じ金額の
ベアで経営側と妥協し、傘下の中小組合に賃上げの流れを波及させる
手法を取っている。
大手6社の労働組合は、円安による好業績を踏まえ、
消費増税に伴う物価上昇に賃上げが追いつくよう
6000円のベアを要求していた。
大手6社の業績は、インフラ(社会基盤)関連事業が
好調な日立、東芝、三菱電機の重電3社が
15年3月期連結決算の営業利益が過去最高になる見通しだが、
富士通としてNECは出遅れている。
いち早く日立と三菱電機が「ベア3000」を固め、
東芝、パナソニックも追随したが、富士通とNECが強く抵抗。
統一回答に向けた大詰めの調整が続き、
13日に富士通東京NECが受け入れた。
電機大手の経営側は18日に一斉に回答する予定だ。
全日本空輸は13日、2008年以来、7年ぶりのベア実施を決めた。
基本給を月額1000円引き上げる案を労働組合に示し、
3月中に妥結する見通しだ。
航空業界は業績が上向いており、
5年前の経営破綻で給与の約2割削減に追い込まれた
日本航空も14年ぶりにベアを実施する。
賃金水準が低いと指摘される外食業界も、
人手不足の解消に向けてベアに前向きだ。
ガストやバーミヤンなどを展開するすかいらーくは、
4300円のベア要求に満額回答した。
業界では、すかいらーくの回答が春闘の目標となっており、
ロイヤルホストを展開するロイヤルホールディングス(HD)も
16年ぶりのベアに踏み切る。
少子高齢化に伴う市場縮小に悩む内需型企業でも、
三越伊勢丹が「社員の士気を高めたい」(幹部)として
経営統合した11年以来、初のベアを実施する見通しだ。
横浜銀行の労働組合もベアを要求する。
実現すれば20年ぶりとなり、他の地方銀行に影響を与えそうだ。
第一生命保険は10年の株式上場以来、初めて特別金を支給し、
正社員などの年間給与を平均1%引き上げる。