女性登用を進める企業の動きが、
金融機関の新たなビジネスチャンスとなりつつある。
政府が女性の活躍推進を掲げ、企業も対応を急ぐ中、
融資などの基準に女性登用の視点を盛り込むことで
新たな資金需要の掘り起こしを狙う。
「三井住友銀行」は今年から、
企業の女性登用の度合いを診断するサービスと融資を
セットにした「なでしこ融資」を始めた。
調査や分析を担うのは、企業の女性登用診断で実績がある
グループ会社の日本総合研究所。
経営陣へのヒアリングや社員アンケートも実施し、
女性の登用実績▽平均勤続年数の男女差
▽女性が働きやすい柔軟な勤務制度の有無など22項目を診断。
同業他社との比較も示しながら改善策を提示したうえで、
診断を基に女性登用が進んでいたり、
改善が期待できたりする企業に絞って融資する。
ゼネコン大手の「鹿島」は3月に「なでしこ融資」を受けた。
同社は2020年までに技術系の女性社員と
管理職比率を14年比で倍増させる目標を掲げる。
「助言を受けられるうえ、女性活躍推進への
姿勢や取り組みを社内外に明らかにすることで、
建設業の魅力向上につながると考え、利用を決めた」という。
融資先企業にとっては改善策が把握できるほか、
第三者機関の評価によって女性の登用に対する
積極姿勢をアピールできる。
なでしこ融資への反響は大きく、
三井住友銀行は15年度に1000億円の
融資実行を見込む。
「東邦銀行(福島県)」は今月23日から、
企業の女性登用度を基準にした新型ローンの取り扱いを始める。
将来の女性管理職比率目標を示すなど登用に積極的な企業に対し、
金利を最大0.2%優遇。同行は「政府も重点課題に掲げる
女性活躍の流れを融資面からも後押ししたい」とする。
「日本政策金融公庫」も東京都民銀行、金沢信用金庫など
地域金融機関と協力し、女性の雇用に積極的な企業などを
サポートする融資制度を作った。商工中金も、
大阪市の「女性活躍リーディングカンパニー」認証を
受けた事業者に低利融資を行っている。
政府は女性活躍推進法案を今国会に提出しており、
企業は対応を迫られている。金融機関にとっても顧客開拓に加え、
「女性登用に積極的な企業は経営が堅調なケースが多く、
優良な取引先との関係強化も期待できる」(大手銀)といい、
同様のサービスは今後、さらに拡大しそうだ。
安倍政権は女性の活躍推進を成長戦略の中核に据え、
「2020年までに指導的地位に女性が占める
割合を30%にする」との目標を掲げている。
少子高齢化で働く世代が減る中、多様な人材の能力を生かし、
社会の活性化につなげる狙いがある。
日本は政治や雇用、学術分野などで女性の参画が
他の先進国より遅れており、内閣府によると、
管理的な仕事に従事する人のうち
女性が占める割合は11.9%(11年)。
米国43.0%、フランス38.7%、ドイツ29.9%
(いずれも10年)など主要国を下回る。
大企業や自治体に女性登用の目標設定を
義務づける女性活躍推進法案は昨年の衆院解散で廃案になったが、
政府は今国会に再提出している。